最低王子と恋の渦
「もうこうなったら美乃から押すしかないね!」
「…は?」
フンと鼻息を荒くしてガッツポーズを作る菜々。
また楽しんでやがるなこいつ。
「いや…だから片想い確定してるんだから私が押したところで無駄なんだってば」
「じゃあ何よ、あんたほんとに何もしないわけ?」
その言葉に私は少し俯く。
そりゃ何か頑張りたいけど…。
私に勝ち目があるとは思えなくて。
…ほんとヘタレだ、私。
「三鷹くんにはガツーンと押さなきゃ!」
またまたガッツポーズを作って大声を出す菜々。
お、大声で言うなってば…。
他人のフリしたい…。
私がそんな菜々に呆れて溜息を吐いていた、
その時。
「あ、あのっ」
後ろからそんな可愛い声が聞こえてきて、私と菜々は同時に振り返った。