最低王子と恋の渦




「…始めはとても幸せだったんですが、三鷹くん…付き合ってからも全然態度変わらなくって…。

私は次第に不安に駆られるようになったんです」




そう言って少し表情を曇らせる藤本さん。


付き合ってからも態度変わらなかったのか…。

三鷹くんらしいと言えばらしいけど。





「例えば、私が「一緒に帰ろう」と誘ったら「本屋に寄るから」と断られて…。それに付き合うと言っても断られてしまって…」




一口、コップのお茶を飲んで、彼女はまた続けた。





「間接キスしても、全くの無関心で…。

名前で呼んで欲しいと言ったことがあったのに、一度も呼んでくれたことはなくて…。

私が風邪を引いた時も、私の家に果物等を届けてくれたんですが部屋に上がらずにそのまま帰っちゃったり…。まあそれは、私の会いたかったっていう勝手な願望なんですけれど…」





そう言って苦笑いを浮かべた藤本さん。

私はずっと黙って彼女の話を聞いている。





「決め手となったのは、私が別のクラスの人に告白された時です。

三鷹くんに私が告白されたことについて何か思った?と冗談交じりに聞いたら…彼は「別にどうも思わないよ。というかもし藤本さんがあの人のこと好きだったなら俺は何も言わずに身を引くよ」っていつもと変わらない口調で言ってて…」




無理に笑顔を作りながらそう話す藤本さんを、私はじっと見つめた。


…なんか、





「…私、それで三鷹くんに愛されてないのかなって…すごく不安になっちゃって…。私から別れようって、言っちゃったんです…。

勝手ですよね…」





なんか、違う。


藤本さんは悪くないし、



きっと、三鷹くんも悪くないよ。





「あの…私的に、藤本さんは愛されてなかったわけじゃないと思います」



「…え?」




きょとんと潤った瞳が私を見つめる。


美少女と美少年。

藤本さんと三鷹くんが並んでても誰もが納得するカップルだろうな。



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