最低王子と恋の渦
「…あの、お名前は?」
ハンカチで涙を拭きながら、藤本さんは私に尋ねた。
すぐハンカチが出てくるあたり、女子力相当高そうだな。
「田中美乃です」
「田中さん…あの、本当にありがとうございました」
座ったまま頭を下げる藤本さんに、私は慌ててそれをやめさせた。
律儀な子だなぁ…っ。
「…私、自分から別れを告げたくせに、未だに三鷹くんのことが忘れられなくって…」
「え」
一番聞きたくなかった言葉を聞いてしまった。
なんとなくそんな気はしてたけど、いざ本人から聞いてしまうと…。
ということは、さっきの私の言葉でよりその想いは膨らんだってことじゃ…?
や、やっぱり言わなきゃ良かったかも。
「私、もう一度三鷹くんと会ってみます!田中さんのおかげで、その決心が出来ましたっ」
言わなきゃ良かったああ!
嬉しそうに私の手を掴んで笑顔を見せる彼女は本当に可愛くて。
すごく自分が惨めに感じた。
…ていうか、私も三鷹くんのこと好きなの言わなくて良かったのか…?
まあ元々入り込む隙間なんてないような気はするけど。
ど、どうしよう。