最低王子と恋の渦
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「田中さん」
翌日。
朝、授業が始まる前に席に着いていると、隣の彼から呼ばれた。
ドキッと冷や汗と共に心臓が跳ねる。
「…田中さん、昨日藤本さんに会った?」
…やっぱり…。
チラリと隣に座る三鷹くんを見ると、彼は携帯片手に私をじっと見つめていた。
「藤本さんから急にメッセージきてビックリした」
「そ、そうなんだ…」
「…藤本さんと何話したの?」
「…えっ」
更に冷や汗が流れる。
メッセージって、藤本さんなんて三鷹くんに言ったんだろう。
いやていうか、藤本さんが三鷹くんとよりを戻そうとしてるなんて言えるわけがない。
これ以上自分から砕け散る勇気も体力もありません。
「えっと…現在の株価について少し…」
「は?田中さんが株価のこと話せるわけないでしょ。もっとましな嘘つけよ」
「うっ……あの、女子トークを…」
「嘘」
「…………み、三鷹くんと藤本さんが昔付き合ってたこととか…聞きました」
私が観念してそう言うと、三鷹くんは黙ったまま私から視線を逸らさなかった。
私はそんな三鷹くんに耐えられなくて、思わず目を逸らす。
「…つ、付き合ってた人いたんだね三鷹くん…」
「まあ…藤本さんだけだけど」
〝藤本さんだけ〟
つまり、三鷹くんにとって藤本さんは特別で。
かなり大きな存在なんだろうと思う。