最低王子と恋の渦
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訂正。
待ち遠しくなんて思ってませんでした。
「アッハッハ!すげーうるさいな川平ぁー!」
「川平くん最高ー!」
マイクを握り立ったまま歌う友也のその声量は凄まじく、座ってそれを聞いていた皆はすこぶるテンションが上がっていた。
友也は皆の声すら聞こえていないのか、構わず画面を見つめたまま真剣に歌っておられる。
いやぁ確かにうるさい。
私はその盛り上がっている皆を遠くから見守っているような心境で座っていて。
菜々は隣で注文した料理を貪りながら友也の歌に合いの手を打っていた。
…皆のテンションが高過ぎて若干ついていけないとこあるけど、まあなんだかんだ楽しんではいる。
今の私の暗い気分を紛らわしてくれているようで…。
「やっぱり元カノのこと気になるんだ?」
友也の曲が終わり、菜々もタンバリンを置いて私に顔を向けた。
こいつ器用だなぁ。
「…んー」
「気にしたところで結果は変わらんのですよー?」
「…分かったからそのうざい言い方すぐやめてお願い」
「はいはい。とりあえず次美乃歌いな」
「えっ、いやいいよ」
「せっかく来たんだから1曲披露してみなって。はいはーい!次美乃歌うよー!」
私が慌てて止める暇もなく、菜々はタンバリンをジャンジャン鳴らして皆を注目させた。
ほんっと許さない…っ。
ブンブンと必死に首を振るも、マイクをオンにしたまま喋った友也によってそれも不毛に終わる。
「おー!美乃上手いもんなー!」
「え、田中さん上手いんだ!?」
「楽しみ~!」
結局私はそのまま皆の前でド○えもんのオープニング曲を歌う羽目になってしまったのである。
死にたい。