最低王子と恋の渦
――「田中さんっ」
男子が盛り上がって歌っている中、そう声を掛けてきたのは今日来ていた菜々以外の三人の女子。
クラスは違うけど、そこそこ話した事もある普通の明るい子達だ。
「何?」
「ぶっちゃけさ、王子と付き合ってるの?」
…うっ。
今その質問か…。
目をキラキラと輝かせている三人から目を逸らしつつ、私は「あー…」と声を出す。
菜々は相変わらず食べているのに夢中だ。
「…付き合ってないよ」
「そっかー」
「王子と田中さん結構お似合いだと思うんだけどねー」
「あたし達は応援してるよー!」
そう言ってくれた三人を、私は驚いて見つめる。
…な、何この方達…。
良い人…!
…あの熱狂的な王子ファンじゃなくて良かった…。
「あたし一年の時に王子に告白してるんだよね」
「あたしも!」
「もちろんあたしも~」
まじか。
まさかの三人共かよ。
ていうかそれはもちろんなのか…?
…改めて三鷹くんの凄さを実感する。
「あ、でもあたしは高校じゃなくて中学の時に告白したね~」
「…え?」
…中学?
てことは…。
「そう!あたし中学王子と一緒だよ~!」
ニッコリと可愛らしい笑顔を私に向けてくる。
…こ、これは良い機会だ!
「あ、あのさっ…、三鷹くんって藤本さんって子と付き合ってたんだよね…?」
「うん、そだよー」
「え!?そうなの!?」
「王子付き合ってた子いたの!?」
「…ど、どんな感じだった…?」