最低王子と恋の渦
「…三鷹くん…?」
「噂をすれば秀吉くんじゃん」
「…は?」
三鷹くんはそう眉間にシワを寄せて隣の彼に視線を移す。
思わずじわぁっと目頭が熱くなってしまった私は少し俯いた。
良かった…。
「助かった」という安堵感が湧き上がる。
いつも私がピンチの時に現れてくれる三鷹くんに、惚れ直さないわけがなく。
同時にきゅうと胸が苦しくなった。
…てか
三鷹くん、藤本さんは!?
「それより何してんの?」
「ん?今から美乃ちゃんとどっか遊びに、ね?」
「行きません行きませんっ」
「田中さん行きませんって言ってるけど」
「照れてるだけだって」
1ミリも照れてませんけど!?
ブンブンと思いっ切り首を振っていると、お兄さんは私を止めるようにコツンと頭を寄せてきた。
その接近に私は思わずピタッと止まってしまう。
この人何かと近過ぎないか…?
そういえば和久井くんも割と近いような…。
兄弟だな。
「…とりあえず田中さんから離れてよ」
「は?なんで。君別に美乃ちゃんと付き合ってなかったんだろ?」
そういえばこの人、前は私と三鷹くんが付き合ってると勘違いしたまま去ってったんだった。
きっと和久井くんから情報が漏れたんだろう。
「付き合ってないにしても、田中さん明らかに嫌がってるよ」
「そう?俺には照れてるようにしか見えないな~」
貴様の目は節穴か!?
私が再びグイッとお兄さんから離れようと力を入れると、彼はまたしても私の肩を寄せて密着する。
絶対分かっててしてるなこの人…。
「人の気持ちも分からないなんて動物以下だな」
「…あ?」
と、
三鷹くんは私の手首を掴み、お兄さんが油断した隙に私を引き寄せた。
突然のことに驚き、そのままボフッと三鷹くんの懐に顔が埋まる。
…や、やっと解放された…!