最低王子と恋の渦

秋なし









「…さぶっ」



私は腕をさすりながら体を震わせる。



季節は10月上旬。


秋真っ只中…のはずなのに。



なんでこんな気温低いの。

もっと秋らしい気温になってよ。



四季では秋が一番好きなのに、その秋は今年消滅してしまったようだ。




「一気に寒くなったね」




向かいの席を借りて座っている菜々が欠伸をしながら言った。

私はコクコクと頷いてそれに同意する。




「寒いんならカーディガン着ればいいじゃん」




と、隣に座る三鷹くんが片肘を付いて私を見た。



そんな三鷹くんはちゃっかり黒色のカーディガンを着用していた。




「…棚から出すのがめんどうだったの…」


「だったら自分が悪いじゃん文句垂らすなよ」




正論だ。


言い返せない…。




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