最低王子と恋の渦
今から田中さんは体育館裏に向かい、佐々木に告白をする。
それを想像して、やっぱりベタ過ぎるだろと突っ込みたくなった。
突っ込んでもいいけど、めんどくさい。
「…じゃあ、そろそろ行くね?」
「うん」
ここで最後に言う言葉は決まっているはずだ。
普通の人なら「頑張れ」の一言をきっとここで。
でも、
「なんか田中さんが告白って似合わないね」
俺はどこまでも素直じゃない。
「…えっ!?な、何それ失礼なっ…!」
「しかもベタな告白」
「た、確かに私も告白するの初めてだよ!私らしくないのも自覚してるけど…もう呼び出しちゃったんだから逃げられないし…っ」
「やっぱりヘタレだね」
「うるさいなぁ!…そもそも三鷹くんだってここは普通に『頑張って』って言ってよ」
「無理」
「な、なんで」
「自分で成就する確率が10%とか言ってるようなものを『頑張って』って言うだけ無駄だろうし、失敗した時に辛いでしょ」
「いやいや…せめてお世辞でもいいから言ってよ…」
「それで応援されて田中さんは嬉しいの?」
「されないよりかはね!」
そう怒ると、田中さんはハァと溜息をついて口を尖らせた。
…田中さんの頬は相変わらず赤い。