最低王子と恋の渦
「一緒に帰ろう」と誘われた時も、
門限があった藤本さんをあまり遅くまで連れ回したくなかったから断った。
間接キスの良さは未だに分からないし、
名前で呼ぶなんてむず痒くて無理。
お見舞いだって、
きっと会いに行ってもし俺に風邪が伝染った時はどうせ藤本さんは申し訳なく感じるんだ。
それなら最初から会わない方が良い。
…でも、そうやって素直に本当の気持ちを言わなかったせいで俺は藤本さんを傷つけた。
だから、
もう俺は同じ過ちは犯したくない。
もう失敗したくない。
「…やっぱり田中さんの言う通り、秀吉くんは私が思ってた以上に優しい人だったんだね」
「……」
「……ねぇ秀吉くん。
私…ほんとに勝手なのは分かってるんだけど…、
秀吉くんとよりを戻したい」
そう言った藤本さんの目は真っ直ぐで。
俺は逸らさずに素直に答えた。
「ごめん藤本さん。
俺田中さんが好きなんだ」