最低王子と恋の渦
初めてその言葉を口にした。
「…そっか、じゃあ仕方ないね」
藤本さんはいつもの優しい笑顔を見せる。
…どうでもいいけど、藤本さんのコップのオレンジジュースは既に空だった。
俺のメロンソーダはまだ半分以上残っているのに。
ダイエットしてたからここぞという時に飲んだということなのか。
…まあどうでもいいけど。
「…なんだか悔しいな…」
「何が?」
「…私の方が秀吉くんのこと知ってると思ってたけど、
田中さんの方が全然知ってたみたい」
にこりと微笑む藤本さんから俺は視線を逸らしてメロンソーダを飲んだ。
…田中さんが俺のことを…。
ふぅん。
「というか秀吉くん、なんだかずっとそわそわしてるね?そういえば今日田中さんは?」
「…田中さんは友達とカラオケ」
「……もしかして男の子いる?」
「まあ」
「なるほどね」
ふふ、とまた笑う藤本さんに俺はまた視線を逸らす。
…悟られたな。
まあいいけど。
どこかの勘違い馬鹿はこう言っても勘違いするから困る。