最低王子と恋の渦
あの和久井くんのお兄さんってほんとに何考えてるか分かんない…。
やっぱり苦手だ…。
「とにかくこれ以上噂広めないでよっ?」
「…分かったけど、田中さんは三鷹のこと好きなんだろ?」
……えっ。
思わず固まってしまった。
かあっと顔が赤くなるを感じる。
「……っ」
「…田中さん?」
…す、好き…だけど…。
友也や菜々に言うのは全然抵抗ないんだけど…。
こう…改めて他人に言うとなると…。
と、
不意に私の腕は後ろにグイと引っ張られた。
「…和久井くん駄目だよ…っ。田中さんそういう耐性ないんだよ?」
「に、西垣さん…っ?」
私の腕に自分の腕を巻き付けて、和久井くんを上目遣いで見上げる西垣さんに私達はポカンとした。
…ハッ、でも助かった…。
「そ、そっか…ごめん田中さん!」
「…いや、ううん…」
「じゃあ、授業始まるし比奈子達教室戻るね?」
「あ、分かった。じゃあ」
そうして西垣さんは私の腕を引っ張って5組の教室を後にした。
まだ熱を帯びていた頬に手を添えて、私はきゅっと唇を噛み締める。