最低王子と恋の渦
――「大変ですね」
教室で菜々はご愁傷様、と私に両手を合わせた。
私は「やめて」と溜息を吐きつつそれを払う。
「ていうかなんでカラオケの時に止めてくれなかったの…?」
「止められると思う?私だって二人で突然部屋に入って来られたんだからビックリしてたし」
「それはまあ…説明した通りですけど…」
既に菜々には昨日の出来事は話している。
三鷹くんは藤本さんとはよりを戻す気はなくて、
写真のあれも誤解だったことを。
…また全て私の勘違いだったんだよね…。
と、
「美乃ー!!」
不意にそんな元気な呼び声が聞こえたかと思えば、友也が私の席まで駆けてきていた。
「ど、どうしたの友也」
「美乃はさ、ほんとに三鷹と付き合ってるのか?」
「…ああ、付き合ってないよ…」
「付き合ってないのか!」
そうかぁ!と腕を組んでむむむと顔をしかめる友也。
…友也は友也でいつも元気だなぁ。
「なんで付き合わないんだ?」
「…え、なんでって……それ聞く?」
「三鷹は美乃のこと好きなんじゃないのか?」
「いや…それはだからないってば…」
「そうか?だって、俺は美乃のこと大好きだぞ!」
満面の笑みを向けてくる友也に、
私はポカンと口を開く。
……な、何言ってんのこの人…。