最低王子と恋の渦
「…川平くんってほんとブレないね」
菜々が片肘をついて友也を見上げると、友也は首を傾げた。
…ほんと、ブレないわ。
まあそこに救われるんだけどさ。
「そういえばその三鷹くんは?朝からなかなか見かけないけど」
「確かに…」
朝登校して来た時には既に三鷹くんの鞄は机に掛かっていて、
しかし当の本人はどこかに行っているらしく、授業が始まる頃に教室に戻って来ていた。
だから朝から三鷹くんとは話せていない。
三鷹くんからも何も言ってこないし…。
…そういえば、
私ってほとんど三鷹くんから声掛けられて話してるような…。
「あ、噂をすれば三鷹くん」
「えっ?」
菜々の視線を追って教室の後ろのドアの方へ目を向ける。
そこには本当に三鷹くんがいて、こちらに向かって来ていた。
少しドキリと胸が鳴る。
「…何?」
三人でじっと三鷹くんを見つめていたので、三鷹くんは眉をひそめて私達を見下ろす。
「あ、いや…どこ行ってたのかなって…」
「田中さんは俺がいなくて寂しかったの?」
「……は!?」
「ごめん疲れてるから無視していいよ」
…!?
いや、無視していいよって…。
一体どうしたっていうんだこの青年は。
明らかにおかしい。