最低王子と恋の渦
――「てか付き合う前から私達一緒に食べてたよね」
ふりかけのかかったご飯を口へ運びながら菜々は私と三鷹くんを交互に見た。
…それは、確かに。
席近いからなんとなく一緒に食べてる形になってたよね。
チラリと隣に座る三鷹くんに視線を移すと、三鷹くんは私の視線に気付いて小さく微笑んできた。
そんな三鷹くんにドキッとしたところで、三鷹くんはパンの袋を開きながら菜々に視線を戻した。
「非常に不本意だったよ」
「……えっ、不本意!?」
「えーなにそれひっどーい」
ガーンとショックを受けている私に構わず、三鷹くんは平然とパンに齧り付いている。
「冗談だよ」
「…み、三鷹くんのは冗談に聞こえないんですよ」
「ちゃんと冗談って言ってあげてるんだから優しいでしょ?」
「ならそもそもそんな冗談言わないでよ!?」
「コミュニケーションの一環だよ」
ひねくれたコミュニケーションだな。
私はハァと溜息を漏らしながらお弁当に箸を付ける。
と、
「あ、田中さーん!」
そんな元気な呼び声が聞こえてきて、私は瞬時に誰か判断出来た。
食堂でよくもまぁそんな目立つようなことしてくれるよね。
ただでさえ既に三鷹くんと一緒にご飯食べてるから注目されてんのに。
「和久井くん…」
「いいなー三人でご飯なんだー」
「和久井くんも友達と来てるじゃん」
「まーね!」
にぱーっと可愛らしい笑顔を惜しげもなく私に向けてくる和久井くんは正に犬のようである。