最低王子と恋の渦
「珠妃ちゃん」
「…へっ?優太?」
突然声を掛けられた珠妃はぎょっとして優太を見上げる。
周りにいた女子達は少し興奮気味で大人しく二人の様子を眺め出した。
「今日…部活見学しない…?」
「…え?ぶ、部活って…サッカー部?」
「うん」
「……別にいいけど」
戸惑いながら珠妃が頷くと、優太はホッと安心する。
ただし表情は至って無表情。
「…でもなんで?」
「…珠妃ちゃんに見てて欲しいから…」
「珠妃に?」
「うん」
その言葉を聞いて、珠妃はぽぽぽと顔を赤らめた。
周りの女子も小さくキャーキャーと騒いでいる。
「…じゃあまた放課後ね」
「う、うん」
そう言い残して自分の席へ戻って行く優太を、珠妃はじっと見つめた。
「珠妃ちゃんいいなぁ〜!」
「田中くんに愛されてるねー!」
「…そ、そんなんじゃないもんっ!」
キャッキャとはしゃぐ彼女達から顔を逸らし、珠妃はうぅと唇を噛む。
…ゆ、優太は天然だから。
きっと珠妃のこと幼馴染としてしか思ってないもん…っ。
だから、期待するだけ後で辛いんだ!
そう自分に言い聞かせるも、内心珠妃は放課後を心待ちにしていた。