最低王子と恋の渦
「ただいまー」
玄関の扉を開けながらそう言った私は、三鷹くんを家に招き入れた。
するとドタドタとお母さんが玄関まで駆けて来るのが聞こえた。
「美乃! おかえりな……えっ?」
お母さんはどうやら私の隣に立つ三鷹くんに驚いたのだろう、きょとんとしてその場に立ち尽くした。
「あ、えと…友達の三鷹くん。家まで送ってくれたからお茶でも出そうかと思って…」
「あらぁ!あらあらそうだったの!いやねぇもう私てっきり美乃が彼氏連れて来たのかと思っちゃったわぁ」
ややテンション高めでそんなことを笑いながら言い出すお母さんを、私は無視して靴を脱ぐ。
三鷹くんも私に続いて靴を脱いだ。
「三鷹くんだっけ?あなた男前ねぇ〜!」
「ありがとうございます。奥さんも綺麗ですね」
「まあまあお世辞なんていいのよぉ!さ、ゆっくりしてって」
すっかり機嫌の良くなったお母さんは私と三鷹くんをソファに座らせて、お茶を入れてくれた。
「そういえば美乃、今日水道管が破裂して水被っちゃったんでしょ? 大丈夫なの?」
学校から連絡が入っていたらしく、そう言い出したお母さんは心配そうに私を見た。
「ああ、うん大丈夫。すぐ体拭いたし」
「そう…なら良かったわ」
ほっとした顔を見せた後、お母さんは夕食の準備の為にキッチンへと行ってしまった。