最低王子と恋の渦
「あー知ってるんだ。話した事は?」
「…ないですねー」
「なーんだ、そっかー」
そんな短髪の人と菜々との会話を黙ったまま眺めていた私はジュースを飲んだ。
…まあ特に危害を加えてくるわけでもなさそうだし。
ていうかただ暇だったんだろう。
でもめんどくさいから早くどっか行ってくれないかなぁ…。
なんてジュースを飲みながらボーッと店内の方を見渡す。
「ねぇ、これから予定ある? ないなら俺ら暇してたから遊びに行かね?」
と、そう言い出した短髪の人。
私は「うわ」と心の中で声を上げる。
やっぱりこのパターンか。
チラリと菜々を見てみると、彼女は先程と変わらない表情のまま肘を付いていた。
「別に予定ないですけど、それは遠慮します」
「えー、なんで?」
「美乃とゆっくり話す為に来たんですもん。ていうかテスト明けで疲れてるし」
「美乃って…」
短髪の人はそう言いながらチラリと私の方を見た。
私はぎょっとして短髪の人から目を逸らす。
…そうですよテスト明けで疲れてるんですよ菜々とお喋りしたいんですよ帰ってくれませんか…。
私は冷や汗を掻きながら心の中で拒否する。
しかし短髪の人は何を思ったか、どっしりと私の隣に腰を下ろした。
「…!?」
「あんま喋んないけど、美乃ちゃんって無口?」
いきなりちゃん付けかよ!?
隣で私の事を見つめてくる短髪の人に私は戸惑いを隠せなかった。