最低王子と恋の渦
そんなある日。
「あ、王子だぁ。やっほー」
そんな軽目な声が廊下側の窓から聞こえてきた。
パッとそちらの方を見てみると、数人のうるさい系の女子が窓から顔を出しているのが目に入った。
あ、王子って呼んでる人ほんとにいたんだ。
「…何?」
「えへへー、王子今日もかっこいいなーって」
「そんなどうでもいい理由でわざわざ声掛けなくても」
いやさっきもあんた私とどうでもいいこと話してたけど。
三鷹くんの毒舌とそのニッコリ見せる笑顔のギャップはすごいと思う。
なんて私はそんなくだらないやり取りを傍観していた。
と、その時。
「おーい田中ー。このノート職員室の担当の先生のとこまで持って行ってくれー」
担任の先生が私に向かってそんなことを言った。
私は「えっ」と声を出して席を立つ。
「お前日直だろ今日」
「あ、そうでした」
しまった忘れてた。
遠くから菜々の「ドンマイ」という笑い声が聞こえるのは気のせいかな。
そして先生は次の授業に向かうべく教室を後にした。
…ていうか。
そう思いつつ私はチラリと黒板の端の日直担当の名前を見る。
…三鷹くんも日直じゃん…。
なんで先生は女の私に任せたのよ。
そりゃ三鷹くんの方が何に関しても優れてるけどさ。
まあ三鷹くん、今女子達と話してるからいいけど。
と、私は溜息を漏らしながら教卓までノートを取りに行った。