最低王子と恋の渦
――階段を下りて私は職員室へ向かった。
…ていうかほんとに重いこれ。
まあクラス全員分だしなぁ。
と、遂に私はバラバラと数冊のノートを落としてしまった。
「あぁ~…」
そんな情けない声を小さく上げながら私はどうしようかとオロオロする。
一旦ノートを床に置いて拾うか。
なんて考えながら、私がしゃがみ込もうとしたその時。
スッと横から落としたノートを誰かに拾われたのが見えた。
「えっ」
「ごめん、やっぱり俺が行けば良かった」
「あ、三鷹くん!?」
なんと拾ってくれたのは三鷹くんだった。
三鷹くんは何も言わずにひょいと私からノートを取り上げる。
お、追っかけて来てくれたのか…。
どんだけ優しいんですか。
これぞ王子と呼ばれる所以なのかもしれない。
「あ、ありがとう…」
「普通なら皆こぞって俺と半々で持って行きたがるのにね。田中さんって頑固? それともお人好し?」
そんなことを言い出す三鷹くんを私は困惑した顔で見た。
なんだこいつ。
自分がモテてるってやっぱ自覚してるのか。
ていうか普通に優しいって受けとれよ!
…まあ実際優しさじゃないんだけどね。
「あー…あの女子達が怖かったからさぁ…。あと、ほんとに日直の仕事出来てなかったからってのもあるよ」
「…へぇ」
…あれ?
毒舌な三鷹くんならさっきの聞いて貶してくると思ったんだけどな。
三鷹くんはそのまま職員室に入り、担当の先生へそのノートを提出してくれた。