Trick or Treat?


心の隅っこで、思っていたけれど何度も押し隠してきた、事実を神崎くんは言った。


そんなの、私だってどこかで分かっていた。


「なあ、笹川」


視界が、滲んだ。

ぽつ、ぽつ、と地面を黒く染め上げていく。


由良くんは私のことなんて、好きじゃない。

彼女だって言ってくれるけれど、俺のだって言ってくれるけれど、由良くんの気持ちは言ってくれない。



「……泣くなよ」


ぽん、と頭に手を置かれる。

優しい体温が、すうっと心の中に入っていく。ああ、もう、そんなことされたら泣いてしまうじゃないですか。


「うっ、ううう……」

「……アイツのために、泣くくらいならさ」


そういった瞬間───視界が、真っ黒になった。



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