Trick or Treat?


「アイツのためになんて、泣くなよ」

「……え?」


自分の置かれている状況が、分からなかった。


「……か、んざき……くん?」



私が名前を呼ぶと、神崎くんは抱きしめる腕を強める。まるで離さないって言ってるみたいに。


「お前が協力してほしいって頼んできたときは、単なる人助けだって感じだったけどさ」


「……ぁ、の」


「でも、やっぱり由良にお前は勿体ないよ」


「どうして、そんなこと」


ぐっと手の力を強めて、彼を押し返そうとする。

でも、私の力なんかで叶うわけなんてなくってますます、回る腕の力が強まる。


「俺じゃ、だめかな」


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