Trick or Treat?
「よし、行くぞ」
私は一歩教室に踏み出す。
一瞬、女子の痛いほど怨念のこもった視線が飛んでくるが、いちいち気にしていたらストレスで胃に穴が開くので、無視。
とん、とん、とん。
と彼の目の前までやってくると───由良くんが、顔を上げる。
そして、にっこり微笑んだ。素敵王子の笑みで。
あ、これはまずい。
その顔のまま、私の制服のネクタイを持ってぐっと引き寄せると、
「遅んだよ、このクズ。何時まで俺を待たせるつもり?」
その笑顔からは想像できないような、ドスのきいた声で由良くんはそういった。