Trick or Treat?
しばらく、無言だった。
由良くんはすうっと息を飲んでいるのが、耳元で聞こえたけれど、私は構わず続けた。
「だから、私、由良くんに好きだっていってほしくて」
───神崎くん、ちょっと相談があるんですが。
「神崎くんに、頼んだんだ。協力してほしいって」
───じゃあさ、ハロウィンに好きだって言ってもらえるようにしよう。
由良くんはきっとお菓子を持っていないから、いたずらを。
そのいたずらは───
「───由良くんに好きだって、言ってもらいたくて」
「……」
たった、一言だけ言ってほしくて。