Trick or Treat?
「……それ、ほんと?」
「由良くんに、隠し事はしません」
「……」
由良くんは無言のまま、抱きしめていた腕をそっと離すと私の顔を覗き込む。
その表情に、息を飲む。
あのいつも勝気な由良くんからは想像できないくらい、不安そうに眉を下げる顔。
「私、由良くんの彼女です」
「……」
「だから、由良くん以外好きになんてなれません」
「はっきり、言い過ぎ」
由良くんがちょっぴり、恥ずかしそうに口元を緩めながら笑う。
そして、私の頬にかかった髪をはらりと優しく払うと、
「Trick or Treat?」
と囁くほど小さな声で、言った。