氷の魔女とイチョウとモミジと探偵と怪盗
「待ってください! ホーミィさんはお屋敷の使用人仲間です!」

今度はデイジーが叫んだ。

「そそそそうよ! ワワワワタシはキャロラインのお世話担当のメイドなのよ!」

ホーミィも氷の中で寒さに歯をガチガチ言わせながら訴える。

「その割にはちっとも懐いていない感じだけど?」

「ままま前はこんなじゃなかったの! キキキャロラインがイラついているのは、怪盗セルアのせいなのよ! セルアに逃げられてからずっと、変に吠えたり暴れたりするようになっちゃって…セルアを捕まえてキャロラインを落ち着かせてあげたくて! だからワタシは仕事を休んでセルアの行方を追ってたの!」

「ふむ…」

キャロラインは氷をがじがじ齧っているが、氷からはみ出すホーミィの頭は噛もうとしていない。

「とととところでそこに居る人は誰?」
ホーミィが、氷づけのまま顎だけ動かしてブリジットを示した。



「そーいえば…」

スリサズが冒険者が集う酒場の張り紙でこの依頼を見つけ、店のマスターの仲介でブリジットに会いに行ったところ、彼女は待ち兼ねた様子でお屋敷の門の前に立っていたのだが…

ブリジットが屋敷から出てくるところは見ていない。

「今度こそ謎は全て解けたぁ!!」

スリサズはブリジットを氷づけにした。



「ななな何をなさるんですか!? その方は本物のブリジットお嬢様です!!」

デイジーが大慌てで叫ぶ。

「えー? でもホーミィさんが…」

スリサズがホーミィを振り返ると…

ホーミィの眼鏡のレンズは、氷魔法の余波にやられて、真っ白に曇ってしまっていた。

ホーミィが言った『誰?』というのは、眼鏡の曇りのせいで目の前の人の顔が見えないという意味だったのだ。
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