氷の魔女とイチョウとモミジと探偵と怪盗
真相解明!!
「そう…あれは、月のきれいな夜のことだったわ」

怪盗セルアは遠い目をして空を仰いだが、氷でガチガチに固められて地面に転がされているのでどうにも決まらなかった。

「金持ちの屋敷に華麗に潜入したアタシは、貴重なモミジメダルを見事な手口で鮮やかに盗み出したのよ!」


「華麗も何もただのコソ泥でしょ? さっさとメダルを返しなさいよ!」

スリサズが腰に手を当ててセルアを睨み下ろす。

その傍らでは氷から開放されたブリジットとデイジーが今度こそ本物の犯人であってくれと祈るような目で様子を見守り、ホーミィは魔法の探偵杖の効果を褒めてほしげにフリフリしている。

「月の輝くイチョウ林の逃走劇! それはそれは美しかったわ! …そのデカ犬が出てくるまでは!」

セルアが憎々しげにキャロラインを睨むが、キャロラインは素知らぬ顔でロゼルに撫でられ腹を見せている。

「この犬のせいで…せっかく盗み出したモミジメダルを、イチョウの落ち葉の山の中に落っことしてしまったのよ!」

「ん…? 隠したんじゃなくて落っことしたの?」

「そうよ…そしてそれを探しているうちに追っ手が来たの! だからアタシは思わせぶりな言葉を残して、他の人がメダルを見つけてくれるのを待っていたの! 見つかったらまた盗むつもりで!!」

「じゃあモミジメダルは…」

「まだその辺の葉っぱの下に埋もれたまんまなんじゃないの?」
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop