携帯電話の怖い話
悟はそれからダイヤルを最大の-10にした。これですべてのゲームがやり込める。それしか頭になかった。
ひたすら指を動かし、画面を見続けていた。

しばらくたった後、悟は違和感を感じた。持っていたスマホが小さくなっていた。いや、悟の指が大きくなっていた。節くれて毛が生えて完全に大人の指だった。

思わず、悟はスマホを投げ捨て自分の体を見た。引きこもってふっくらとした体も完全にでっぷりとしたビール腹になっていた。顔を触った。顎や頬がジョリジョリする。訳が分からない。

「鏡だ。鏡で確認しよう」

悟は二階の自分の部屋から下の洗面所に向かった。ドタドタと下に降りる音に気づいたのだろう。母親が階段下にいた。煩わしくて廊下と母親の間を通り抜けようとした。

「きゃっ」

母親がよろけた所を通り抜けて洗面所に向かう。それどころじゃない、悟は思った。そして、違和感も感じた。母親はあんなに小さかっただろうか。そして何となく廊下も狭く汚れて見える。

……古くなっている?

悟は洗面所につき鏡で自分の姿を見た。心臓が止まるかと思った。そこには自分じゃない中年の太ったおっさんが映っていた。違う。これは僕じゃない。僕と同じ動きをしているだけの幽霊だ。化け物だ。僕じゃない。

悟は20年時が経っていたのに気づかなかった。
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