シンデレラは硝子の靴を
男を引き渡し、沙耶は拍手喝采の中、スーパーを後にした。


―すっきり、しない。


だが、苛々は募るばかりで、心の中に暗雲が漂う。



「君、困るよ!」



あてもなく歩いていると、ふと怒鳴り声がどこからか聞こえ、思わず立ち止まった。


「すみませんっ、、ですが…どうしても、、、子供の熱が上がってしまったんです…帰らせていただけませんか…お願いします!」



見ると、フードコート内の中華料理店で何やら一悶着やっている。


どうやら、女の店員が男の店員に叱られているようだ。




気付いている客も数人おり、ちらちらと視線を送ってはひそひそと話し、見物を決め込んでいた。




「何言ってんの、許せるわけないでしょ。あーあ、だから子持ちは困るんだよなぁ。雇うのにデメリットが多過すぎるよなぁ。」


「すっ、、すみません…っ」


「黙れおっさん」



気付けば、沙耶は一段高くなっているカウンター脇の男を見上げ、声を発していた。



「?誰ですか??あなたに関係ないでしょう!?黙っててくれますか。」



根性が曲がっていそうな丸い中年の男は、興奮して唾を飛ばす。



「だったら聞こえないようにやれば?あんた子供が熱出してるんでしょ?早く帰りなよ。」


「えっ…」



当然、沙耶に帰れと言われた女は戸惑いを隠せない。


「ちょ、あんた何勝手なことやってるんだよっぐっ」


「よく聞きな、おっさん。」


沙耶は一段上がると、男の胸倉を掴み、顔を寄せる。
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