シンデレラは硝子の靴を
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「えー、それでは、石垣グループ代表取締役石垣諒様からご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願い致します。」
何とか間に合った式典。
沙耶は席には座らずに、出口付近の壁に寄り添うようにして、立っていた。
無論、席はあったのだが、事情があって早く逃げられる場所が良い。
壇に上がった石垣を見て、少しだけ、会場がざわついた。
それと同時に沙耶の鉄の心も僅かに痛む。
「ねぇ、社長どうしたの?」
「誰にやられたのかしら?」
「午前中視察しているのをお見かけした際にはあんな風にはなっていなかったような…」
ひそひそと飛び交う会話の内容は、どの人も皆一様だった。
「ご紹介に預かりました石垣です―」
明らかに不機嫌。
愛想笑いが逆に怖い。
その左頬に貼られている湿布。
―今度こそ、殺される。
式の内容なんかぶっとんで、沙耶は迫る命の分かれ目に希望が持てずに天を仰ぐ。
―だって…仕方なかった。
そうして心の中だけで、言い訳を紡いでいく。
栗色の髪が。
竹林の思い出が過ぎって。
過剰なストレスを感じて。
苛々が募ったから。
石垣の最後の駄目だしで、それが爆発した。
だから、何もかもあいつのせいなのだ。
沙耶は。
自分は。
悪くない筈だ。
そう、言い聞かせた。