シンデレラは硝子の靴を
「!」
ステージの脇、石垣のちょうど真上に不自然に何かが揺れている。
―危ない。
ぐらつくのは複数付けられているうちのひとつのライト。
位置が、少し高いか。
そんなに大きくはないが、落ちれば危険なのは一目瞭然だ。
「危ないっ!!」
偶然だろうか。
走り出しながら、沙耶は思考を巡らせていた。
ステージ上ではアイドル達によるミニコンサートが始まっていて、観客の声援が交じり、数メートル先に居る石垣に沙耶の声は届かない。
突然の顔出し。
このタイミング。
このイベントの進行。
あの位置。
偶然にしては、出来すぎている。
―私のせいだ。
狙われていると知っていたのに、気を緩めすぎた沙耶に非がある。
ヒートアップしている広場では、ぐらつくライトに気付く人は少ない。
そして―。
バーン!
豪快な音と共にステージスコールクラッカーが吐き出されたその時に。
「きゃぁー!!!」
本物の悲鳴も聞こえた。
それは落下したライトに漸く気付いた人の声だったのかもしれない。
兎にも角にも、沙耶は石垣を突き飛ばし―。
―しくった。
ガシャーン!!!
避けるのに、コンマ数秒足りずに。
五キロくらいの塊を、自分の身体に諸に直撃させてしまった。
―つーか、こんなんで狙うとか…
襲う痛みに、沙耶は呆れる。
狙ってるのは、命じゃないんだろうか。