シンデレラは硝子の靴を
「もうひとつ、訊きたいことがあるんですけど…全然コレとは関係ないんですけど…」
沙耶が言いながら負傷した腕を指せば、坂月がどうぞ、と先を促した。
「あの、、社長…、いやあいつが、、私の小さい頃のことを訊いてきたんです。」
事件とは別件と言った事で、幾分和らいでいた坂月の表情が、再び固くなった事に沙耶は気付かない。
「それで…坂月さんも引越しの時、私が昔なんて呼ばれてたか訊ねたって駿に聞いて…あいつ、、なんか探ってます?」
なんとなく、自分の事を人に訊くのは恥ずかしく、沙耶は俯きながらぽつぽつと話していたが、最終的には坂月を見上げた。
「…坂月さん?」
そこには、難しい顔をして黙る坂月の姿があって、慌てた沙耶は自由な方の手をぶんぶんと振った。
「す、すいませんっ!!変なこと訊いて!なんかちょっと自意識過剰ですよねっ!!!」
同時に、ばさり、花束と菓子折りが廊下に落ちる。
その音と沙耶の声で、坂月ははっとしたような顔をして。
「あ、そんなことっ」
坂月が咄嗟に首を横に振る。
「すみません、、ちょっと事件のことで色々考えてしまっていて-。」
にこり、微笑を取り戻した坂月に、沙耶は胸を撫で下ろした。