シンデレラは硝子の靴を
「ええと、何でしたっけ…そう、秋元さんの昔の事を探っているのか?っていうことですよね。社長が何を思って訊いたのかはわかりませんけど…」



「あれ、じゃ、坂月さんは…」



「私が弟さんに訊ねたのは、別に社長に頼まれたからではありません。ただの興味本位で訊きました。不快な思いをさせてしまったのなら謝ります。」



ぺこり、頭を下げる坂月に、沙耶は慌てた。



「あ、いえっ、別に嫌な思いなんてしてないから大丈夫です。あの、顔上げてくださいっ!」



そう言うと、坂月はまた笑って沙耶と目を合わせる。



「良かった。」



-ん、なんだ?



柔らかい笑みに、沙耶の胸がドキっと鳴った。



「訊きたいことは他にはありますか?」



言いながら、坂月は下に落ちた物を拾い上げ、沙耶に渡した。


「だ、大丈夫です!」



-おい、心臓、おかしいだろ!何、それ!



自分の中の『何か』に動揺しながら沙耶はかろうじて答える。



「じゃあ、私はそろそろ-」


「はいっ、すいません、ありがとうございました!」



小さく頭を下げて踵を返した坂月に、沙耶も深くお辞儀した。



「-秋元さんは-」



少し行った所で立ち止まった坂月が、背を向けたまま。



「小さい頃…社長と会った記憶はあるんですか?」



沙耶に訊ねるから。


坂月が一体どんな顔をしているのかは、沙耶からは見えなかった。



「いえ!ないです!」



はっきりきっぱり言い切った沙耶に、坂月が小さく笑った、ような気がした。


そうですか、と呟いて。
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