シンデレラは硝子の靴を
「あー…だる…」



坂月が帰った後、沙耶は部屋でひとり呟く。


のろのろとソファまで行くと、タオルケットにくるまって横になる。


もらった花束と手土産に、行き場所を与える余裕もないまま。




―本当に、へんなの。。



腕に当てた保冷材が、心地良い。



目を閉じれば、直ぐに浮かんでくる。



―なんで、今更。



遠い記憶は遠いままでいいのに。


そうすれば。


どんどん美化されて、自分を支えていってくれるから。



―なのに、なんで、今更。出てくるの?


あの幼いプロポーズ以外は、今まで思い出せなかったのに。


どうしてか、この頃。


夢の中に必ず、あの男の子が出てくる―。



本当なのか、それとも、記憶の断片が繋ぎ合わされただけの記憶なのか。



どちらなのかはわからないけれど。




―そういえば。。



幼すぎるプロポーズに対して、自分はなんて答えたんだろう。


自分の心の奥底にある感情に、沙耶は違和感を覚える。




―確か、最初はあの男の子のことが、大嫌いだった気がする。



なのに、いつから。

自分はあの思い出に、こんなに頼るようになってしまったんだろう。

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