シンデレラは硝子の靴を
数分後。
いつかのフェラーリに、沙耶は乗せられて。
「大体病院から逃げるなんて、前代未聞なんだぞ。しかも俺を置いてとか、考えられない。」
甚くご立腹の石垣に、説教を受けていた。
「そういうのを放っておくとだな、後から色んな後遺症に悩まされることになるんだ。」
「…仕方ないじゃない。」
「はっ!まだ口答えする元気があるのか!本当にお前は減らず口だよな!はいって言えないのか、はいって。」
沙耶は窓の外へぷいっと顔を向ける。
「あ!おい!今舌打ちしたろ!?舌打ち!女の癖に舌打ちとか!」
「ちょっと!女の癖にって何よ!あんただって男の癖にみみっちいことでいつまでもくどくど言ってんじゃないわよ!」
「仕方ないだろう!!!!」
予想外に大きかった石垣の声に、沙耶はビクリと肩を振るわせた。
赤信号で停まった車の中で、石垣は沙耶を見つめる。
「お前がそんなになったのは俺のせいなんだぞ!?」
―なんで。
なんでまた。
―そんな苦しそうな顔するの。
「―あんたを守るのが、私の仕事でしょうよ。」
かろうじて放った言葉に、石垣は露骨に顔を顰めた。
「俺は、そんなこと、頼んでない。」