シンデレラは硝子の靴を
人生初めてのプロポーズをされたあの日。
しっかりと向き合ったあの子の目は真っ直ぐだった。
絡められた沙耶の小指からはとっくに力が抜けていた。
『およめ…さん???』
言葉の意味を理解するかしないかの内に。
『そしたら僕がさぁちゃんを守ってあげる。』
続けられた約束。
『いつも傍に居て、さぁちゃんを泣かせたりしないよ』
唯一弱さを曝け出しても許される場所。
それが今まさに無くなろうとしていた。
だからこそ、彼の言う約束は、沙耶にとっての希望となった。
『でも…でも…もしも会えなかったら?』
将来への不安を口にした沙耶に。
あの子は少しも迷うことなく。
『大丈夫。絶対に見つけてみせるから。』
自信満々に言い放った。
『だから』
絡まった小指に力が籠もる。
『硝子の靴の片方を、失くさないでね。』
どうか、僕が迎えにくるまで、持っていてね。
そうすれば僕が跪いて、君に靴を履かせるから。
君にぴったりの、シンデレラの硝子の靴を。