シンデレラは硝子の靴を
「―さすが、お姉さん、ですね。。」
駿が僅かに明るさを取り戻して病院を後にするのを見送りつつ、坂月は感心したように、沙耶を振り返った。
「いえ。坂月さんも、ご迷惑お掛けしました。どうぞ、戻ってください。」
だが、沙耶の口調はいつもとは違い、どこか緊張を孕んでいて。
「私は構いませんし、心配なので、せめてお母様の容態が落ち着くまでは一緒に居ますよ。」
坂月が会社に戻った時、沙耶は石垣の取材中の様子を見守って居た所だった。携帯の電源を切っていたため、気付かなかったのだと言った。
その時の沙耶の慌てた様子からは想像もつかないほど、駿の前での沙耶は落ち着き払っていた。
「…いつになるか、わかりませんよ。死んじゃうかもしれないし。」
だから、次に彼女の口から零れた弱気な発言に、坂月は二度驚く。
「え、でも今―」
「駿にそう言って不安を煽った所で何にもならないでしょう。私達に頼る場所はないんです。あの子には一人でもしっかり立てるようになってもらわないと困ります。」
毅然とした振る舞いは、見せ掛けで。
「けど」
組んだ腕も、肩も、よく見たら細かく震えていた。
「母の死に目に会わせなかった事になったら、、、駿は私を恨むんだろうなぁ…」