シンデレラは硝子の靴を
「もしも社長が貴女を捜していたのだとしたら?」




沈黙を割く為か、もしくは恐れているかのように、坂月が畳み掛ける。




「ずっと捜していてやっと見つけて、全ての不可解なことが、それに繋がっているとしたら―」



「―坂月さん?」



怪訝な顔をして、自分を見返す沙耶の声に、坂月ははっとした。



「あ…いや…」



「もう。どうして、坂月さんがそんな必死になるんですか。」



「そ、そうですよね…」





困ったように笑う沙耶に、坂月も調子を合わせる。




「―そうですよ。ほんっと御人好しなんだから。」



そこまで言って、沙耶はまた視線を前に戻した。




「―もし…そうだとしても…坂月さんが言うことが正しくて、あいつが私にそうだって言ってきたとしても…少しはぐらついちゃうかもしれないけど…シラを切り通します。」


そして、力なく笑う。



「それが、あいつにとったって、一番良い。身分違いがどれだけ辛い事なのかを、私は身をもって知ってる。」



初恋は叶わないってよく言うでしょう?と付け足すかのように呟いた。



「あの記憶だけで、ここまでやってこれた。もう十分守ってもらえたから。更新したら、それがなくなっちゃう。」



坂月が口を開こうとした瞬間。



「秋元さん!」



看護師が走って来るのが見えた。


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