シンデレラは硝子の靴を
「駿…」



「どうしたんだよ、遅いから俺何度も携帯にかけたんだぜ?全然でないから心配しちゃったよ。げ、濡れてんじゃん。」




高校生と言えど、心細かったのだろう。

駿は冴えない表情をしていた。




「ごめん。なんかちょっと、転んじゃって…」



「マジかよ?こんな時に勘弁してくれよなぁ。気をつけろよ。ほら」



駿は、沙耶の下手な嘘を素直に信じ、支えるように肩を貸す。




「あ、ありがと。」



頭の中を整理している途中だった沙耶は、正直な所、弟を気遣う余裕などなかった。



ひっかかることは沢山あり過ぎて、思い出を頼るしかない。



けれど、もう一つ。



もうひとつだけ、心に重く圧し掛かっていることがある。




『俺は諒の味方じゃない。』



『もう少ししたら―、俺は諒と敵同士になるでしょう。』




坂月のあの言葉は何だったのか。




三ヶ月前の石垣の言葉がフラッシュバックする。




『なぁ、なんで急に俺の秘書やる気になったの?』



『あんなに嫌がってたのに。もしかして、誰かに買収された?』



『―坂月?』


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