シンデレラは硝子の靴を
―いざ、出陣!


訳のわからない掛け声を心の中でかけて、足元にある棒切れを拾うと、諒は冒険を開始する。



時折、無駄に竹や樹に勝負を挑み、至って順調に勝ち進んでいた。



が。



強気な姿勢はいつまでも続かない。



それに、少しも怖くなかったと言ったら嘘になる。



ましてや、自分以外の言葉を話す生き物が、じっと息を殺して隠れているのを見つけたら。




「うわ。」




心臓が口から飛び出るという表現がぴったりな位、驚くに決まっている。


絶叫しなかっただけ、自分を褒めたい。



―死ぬかと思った。



ブナの樹にできた洞。



その中に、膝を抱えて、憂鬱な顔をして座り込んでいる女の子。




諒の登場に、当たり前だが彼女も相当驚いたようで。




目を丸くして諒を見つめている。





―お化け、じゃなさそうだよな。





「なんでそんな所に座ってるの?」





諒は驚いてしまった事が悔しくて、代償を女の子に求めた。


問い詰めるような言い方になってしまったが、構わない。


お門違いにも、謝れ!と思っていた。



だが。




「―あんた、ふほうしんにゅうって知ってる?」





ばらついた黒髪が印象的な彼女は、諒のことをきつく睨み上げた。





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