シンデレラは硝子の靴を
女の子はまだ話しかけてくるのかと、煙ったそうな顔を諒に向け。
少しの沈黙の後。
「…さぁ?」
と答えた。
一瞬、はぐらかされたのかと思った。
だが、馬鹿にすることはあっても、馬鹿にされることは滅多になかった諒はその可能性を直ぐに消した。
「……さぁちゃん?」
―ふぅん。
名前を知った。それだけの事だったが、なんとなく嬉しさがこみ上げてきて。
「さぁ、かぁ。さぁちゃんかぁ。」
しつこく呼ぶと、彼女は面倒そうに頷く。
最初に感じた恐怖は吹っ飛んで。
―もうちょっと仲良くならないと駄目かな。
この冒険の、新しい仲間をゲットするチャンスを自分は掴んだのだと勝手に思い込んだ。
それが彼女との出逢い。
暖かい、秋の始まり。
赤く腫れた頬や腕なんかには、まだ気付くこともなく。
抱えた膝の痛みも、知らなかった。
ただ、能天気に、遊び場が増えたな、位に考えていた。
つまらない日常に光が当たった、と。