シンデレラは硝子の靴を

強気な女。



そう信じて疑わなかったのに。



次に見たのは、彼女の泣き顔だった。



誰からも見つからないように、裏の裏の隅っこで、声も出さずに泣いていた。




―なんで。



竹林の中、会えないかなと期待して歩いていた。


でもまさか、泣いている所に遭遇するなんて予想もしてなかった。



どうしていいかわからず。




何て声を掛ければいいのかもわからなくて。



落ち葉を踏みしめる音すら、気を遣って。



ただ、膝を抱いて肩を震わせる女の子の隣に座り込んだ。



目が合わないことを良いことに、諒は蹲(うずくま)る彼女を遠慮なく見つめる。



そして、気付く。



シャツから出た白い腕に赤い傷跡。




どうしたの。



なんて。



訊ねることすら、憚(はばか)られるような押し殺した泣き声に、普段は痛まない胸が痛んだ。




それでも、最初は楽観的で、きっと父親か母親に怒られたんだろうな、位にしか思わなかった。



秋の爽やかな風に吹かれながら、お互い無言で、暗くなるまで並んで座っていた。
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