シンデレラは硝子の靴を
仕方なく、力ない足取りで、リビングへと向かう。




「―?」




センターテーブルの上に、何かが置いてある。



不思議に思いながら近づくと。





開かれた手帳と、封筒に入った札束が置かれていた。





「!」




沙耶に振り込んだ三か月分の給料がそのままそっくりそこにある。





「くそ…ふざけるなっ」




封筒を鷲掴みにして壁に思い切り叩き付けると、中から飛び出だした壱万円札が宙に散った。





やるせなさが込み上げてきて、既に何度も追った文字を睨みつける。






「思い出したのかよ…?」





心が震えて、声も震える。




繋がりが消えるような気がして、返却を求めなかった黒皮の手帖。




今日の日付に記された一行足らずの走り書き。




これまでと同じ、沙耶の文字で記されていたのは、記憶を踏まえた上での、彼女の決定だった。










【シンデレラは、硝子の靴を、履かない。】

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