シンデレラは硝子の靴を
『シンデレラの硝子の靴はわざと消えないようになってたんだよ。』




さぁの小さな背中が震えている。


実年齢よりも大人びて見える彼女の背負っているもの。


何かを願う前に諦めてしまって居るような、冷めた感情。


自分から出たものではなく、理不尽さの中から現れ出たもの。


それに巻き込まれ、苦しんで、泣く場所すらない彼女。





『王子様の目の前で、シンデレラが硝子の靴を履くのは―幸せになるのは、きっと、意地悪な継母達への罰でもあったんだ。』



人の幸せを祝福することのできない、私利私欲にまみれた人間への報復。




だから。



だらりと下がった方のさぁの手を、諒は力強く握って引いた。





『やっぱり硝子の靴は必要だったんだ。』




目にいっぱいの涙を溜めて、諒を見上げるさぁの片頬が、赤く腫れて熱を持っている。



それを諒は痛々しげに見つめ。



心に決めた。




『さぁちゃん。僕が君に硝子の靴をあげるから。』




君にしか履けない硝子の靴を。




『だから、絶対に忘れないで。今僕が言ったこと。』





今すぐには助けてあげられないけれど。





自分は幼すぎて無力だけれど。





必ず君を守ってみせる。




必ず。


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