シンデレラは硝子の靴を
一人、取り残された諒は、長机の上に手を付いて腰掛けると天井を仰ぐ。





「厄介なことになったな…」




楓がいつから狙っていたのか。



皆目見当がつかない。



父親が意識不明の今。


この会社を守るのは自分の務めだと思っていた。



なのに。




まさか、内部クーデターが起こるとは。



しかも、こんなに近しい所から。





「対抗策を取らないと…」





諒が視線を手元に戻した途端、スーツのポケットに入れっぱなしだったスマホが震えた。






「誰だよ」





とても誰かと電話、なんて気分じゃなかったが、画面に表示された名前に思わず耳に当てた。







「―孝一?」







名前を呼べば、緊迫した声が返って来て、諒は苦笑する。







「ほんと情報が早いな、お前んとこは。密告者でもいるんじゃねぇの。」




茶化すように言えば、叱られた。





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