シンデレラは硝子の靴を
なんでだろうと思ってた。
いつも、母親が絵本を読むのに、隣に楓がいるのはなんでだろう。
どうして、自分と同じ時期に、母の実家で、佐伯邸で過ごすようになったのだろう。
母親が死ぬ間際、傍に居たのはなんでだろう。
母親が、楓に優しく接するのはなんでだろう。
「いつから…いつから知ってたんだ…」
大人しくて、男の癖にシンデレラの話で泣いてしまうような。
引っ込み思案で、中々人前に出てくることの出来ない楓が。
この事実を知ったのは、いつのことなんだろう。
諒の相手のない問いに、佐武が沈痛な面持ちで応えた。
「幼い頃は、まだ知らなかったと思います。。恐らく最近か、、譲様が亡くなられた際―戸籍か何かで知ったのではと…」
譲とは、楓の父親の事だ。
いや、養父の事だ。
「13の時に一人でか、、きついな。」
誰に訊ねた訳でもなく。
多分、知ろうとしたつもりもなく。
たった一人で、真実を知ってしまった時。
楓は一体何を思ったんだろう。
自分は、石垣家の人間だ、と。
諒と楓は、双子の兄弟だと。
そう、知った瞬間に。