シンデレラは硝子の靴を
「私どうしても、この文字の意味する所がわからなくって…。でも新しいスケジュールからはそれが入っていないんです。つまり私の初出勤日に書いてあるので最後。私が手帖を管理するようになったのは、この次の日からなので。」
最初から、ひっかかってはいたんです、と沙耶は首を傾げて見せる。
「取引って、なんだろう。って。まぁ、私とは関係ないのかなって思ってはいたんですけど…こないだ遡って文字を探してみたんです。そしたら―」
沙耶の指がひとつの日付の所で止まった。
「この日―。石垣のお父さんが事故に遭った日から、マークが始まってる。そして、このマークが付いている日は、坂月さんがほとんど出ていたと井上さんから聞きました。」
そのまま、楓を見上げる。
「但し、取引、と書いてあった日は、表向き、石垣はひとりで出向いていたけれど、実際は相当数の警備員が配置されていたそうですね。」
「―失礼致します。」
そこへ、注文した料理が運ばれてきて、会話は一旦中断となった。
テーブルに料理を並べるのに、邪魔にならないよう沙耶は手帖を鞄に仕舞う。
楓は、乾いた喉を潤すように、グラスから水を口に含んだ。
―あれから、調べたのか。
沙耶が予想以上に踏み込んできたこと。
そしてこれから暴かれるだろう事実の予感に、焦りよりも素直な驚きの方が勝っていた。