シンデレラは硝子の靴を
「諒の父親が退くことが決まった時、それは俺にとってはチャンスでした。だけど、諒は顔色ひとつ変えなかった。」



問題は未解決にしたままで、諒の隙を作らないと、自分は入り込めない。




「そこに―」



坂月は一度溜め息を吐いて、沙耶を辛そうに見つめる。




「貴女が…見つかってしまった。」





諒が、沙耶を探す様に言った時。


最初は、ただの興味本位で、傍に置いておきたくなっただけかと思った。


諒にワインをぶっかけ、喧嘩を売って、呼び出されれば殴るなんて女は、坂月から見たって、興味深い。




でもそれが、実は違うと。




諒のシンデレラ探しだったのだと知ったのは。



沙耶があの時の少女かもしれないと思ったのは。



あの夜、あの庭で、泣いている沙耶を見つけた時。



閉じていた筈の、記憶の鍵が解かれて。



諒も、沙耶のことを―あの時の子なんじゃないかと考えていることを知った。





今も甘えるのが下手な彼女が、自分から思い出してくれるまで。




不器用な方法で守ろうとしていることを。




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