シンデレラは硝子の靴を
「諒の関心は面白い程、貴女に向いていました。」




疑い深い諒が、疑いながらも、沙耶を信じようとしている。



沙耶がどれだけ思い通りにならなくても。




嘘がつけなくて、正義感が強くて、他の人のために怒れる沙耶は諒にとって、いつも真っ白だった筈だ。


触れれば穢れてしまいそうな程。




「だから、俺も、貴女を雇うことに決めたんです。」




一か八かの賭けだった。



本来なら、沙耶を傍に置くのは危険だ。




「貴女には、まるで犯人を捜すために雇ったと思わせて―実際の目的は諒の気を会社から逸らす為だった。」




自分が駄目になれば、きっと失敗してしまうから。



実際、確信が持てなかった坂月が、沙耶の弟の駿に、昔の呼び名を訊いたのはその頃だ。




上手く利用できれば、諒の隙は広がる。



それは、一瞬でも良い。







「レガメのセレモニーの時は、一番の大詰めの時でした。…諒に一般向けの方にも顔を出すよう言ったのは…さっきの貴女の考え通り、私です。但し…狙ったのは、諒じゃない。」





沙耶の顔色が沈んだのがわかる。




「貴女です。」




坂月も今でも闘っているあの時の痛みが、胸まで上がってくるようだった。




「貴女が怪我をすれば、諒が動揺することは目に見えていた。それが狙いでした。このことに関して…言い開きすることは何もありません。」




沙耶であれば、気付くと思った。


だから、必ずこの罠に嵌まると思った。



「わかってしまった以上、私の負けです。処分に関しては、貴女がしたいようにしてください。」




その裏に籠められている意味に気付くのも、早かったけれど。




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