シンデレラは硝子の靴を

「どこに行くつもりですかっ…」



飛んでいく風景に気を揉みながら、沙耶が訊ねれば、嘉納はうーんと首を傾げた。



「とりあえず…ドライブかな。停まると逃げちゃいそうだからね。」



「!そんなことは…」




沙耶は否定するが、嘉納はちらっと後ろを向いて。



「強引でごめんね。君の事を考えていたら偶然歩いてたから。」



にこっと笑って、前に向き直った。




―笑えば全部済ませられるって思ってるなこんにゃろう。




世の中そんなに甘くないんだよと毒づきながら、沙耶は風景に目を逸らす。




同時に嘉納が口を開いた。





「―こないださ、諒が俺の所に来たんだ。夜中に、ずぶ濡れになってさ。」




消しても消しても消えてくれない人物の名前が出てきて、ドキリとする。




「それで、変なこと訊くんだよ。お前の彼女は、金持ちに偏見がないの?とかって。」




嘉納は運転しながら、世間話でもするかのようなゆっくりとした口調だ。





沙耶はと言えば、自分の言った言葉が、石垣に与えていたダメージを知って複雑な気持ちになった。

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